【九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 小江 誠司 教授】

サイエンス最前線

-ユーザーの研究をご紹介-

燃料電池の水素活性化触媒に貴金属を使用しない画期的な触媒を開発、研究成果が本年2月のScienceで公開。さらに同月、第30回日本化学会学術賞を受賞。

[ 2013年6月3日掲載 ]

お客様

松原研究室にて<br>

国立大学法人九州大学
カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
工学研究院応用化学部門
小江(おごう)誠司 教授

研究内容

安全かつ高性能な人工触媒の開発

「世界初の触媒開発~常温で水中の水素から電子~」これは2008年8月9日付毎日新聞の科学記事の見出しです。この記事の中で小江教授が、常温常圧の水中で水素から電子を取り出す触媒の開発に世界で初めて成功したことが報じられました。当時開発された触媒にはニッケルが使用されたため、この研究に対して、白金を使う従来の燃料電池に代わる製品開発への応用が、特に自動車メーカー関係者の間で期待されました。小江教授は、バイオミメティクス(生物模範工学)による次世代の新規材料開発とその技術を応用したクリーンで持続可能なエネルギーの安定供給を目指し、自然界の酵素に着眼し、その働きをモデルとすることで安全かつ高性能な人工触媒の開発について研究されてきました。

常温常圧で水素から電子エネルギーを取り出す

これまでの研究で、2007年に自然界に存在する水素活性化酵素「ニッケル-鉄ヒドロゲナーゼ」をモデルとしたニッケル・ルテニウム触媒が開発されました。その後2008年にはその触媒を用い、常温常圧で水素から電子エネルギーを取り出すことに成功、さらにその技術の応用により2011年に分子燃料電池の開発に成功されました。この時、高価な貴金属を利用することが唯一の課題として残されましたが、2013年2月8日(金)、この課題に取組まれた最新の研究内容が米国科学雑誌「Science」のオンライン版で公開されました。同月、これらの研究に対して第30回日本化学会学術賞が授与されました。

貴金属を使わない水素活性化酵素の結晶構造の解明

研究の中で中性子回折法およびリガクのⅩ線結晶構造解析装置“VariMax Satrun CCD”を利用して、ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼ人工モデル触媒の結晶構造が決定され、新たなニッケル・鉄触媒の開発へと繋がりました。さらにこの触媒を利用して常温常圧で水素から電子が取り出せることも示されています。

図1
図1 ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼモデル錯体のX線構造解析


03

図2 ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼモデル錯体による水素のヘテロリティックな活性化と水素発生

低コストで水素エネルギーを利用する技術の発展

コストが課題とされていた貴金属ルテニウム(240円/g)を利用するのではなく、代わりに、約1/4000の価格の鉄(0.06円/g)を使用した系で水素の活性化に初めて成功されたことは、この研究が学術的な価値だけに終わらず、今後、貴金属を利用しない燃料電池の開発など、水素エネルギーを利用するための技術発展の可能性をも示唆するものと言えます。また、2013年4月8日には平成25年度文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞されました。

小江研究室

小江研究室の皆様
小江研究室の皆様

小江研究室にはNMRやGC-MSをはじめリガクの単結晶X線構造解析装置VariMax Saturn CCD SystemおよびMercury CCD Systemなど多くの分析機器が設置されています。

国立大学法人九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 工学研究院応用化学部門 小江研究室 様
http://web.cstm.kyushu-u.ac.jp/ogo/index.php



s
s